第39回「小沢海外功労賞」受賞者

当協会は、第39回「小沢海外功労賞」の受賞者として個人4名、法人1社を選出した。
「小沢海外功労賞」は、当協会初代会長 故 小沢久太郎氏の醵金をもとに、同氏の国際協力にかけた情熱を永く記念するために昭和55年に創設され、海外での国土開発または建設分野の国際協力に功労のあった個人・法人を表彰するものである。昨年度までに、個人162名、法人51社が表彰されている。
第1回~第38回受賞者(PDF)

第39回「小沢海外功労賞」受賞者

梅田 典夫 氏

(株) 建設技研インターナショナル 事業実施部 技師長
1969年に飛島建設に入社。1979年から海外工事に携わる。マレーシアの水力発電所のトンネル、シンガポールの地下鉄工事に従事。フィリピン、パキスタンの駐在員事務所所長を務め、無償援助工事の提案・開発などのプロジェクト発掘に尽力した。
開発援助事業の企画・立案から工事完成までのプロジェクト全体に関わりたいとの思いから、2004年、建設技研インターナショナルに入社。現在は「南スーダン共和国ナイル架橋建設計画」に常駐監理者として従事している。2013年と2016年に発生した二度の内乱を体験しており、2016年7月の内乱では、日本国大使館とJICAの支援を得て、施工業者の邦人を粛々と退避させたという経験がある。
先進国の土木技術者の使命は、モノをつくるだけではなく、事業を通じて若い土木技術者を啓蒙し、的確な技術を身につけさせることにある、という思いでそれを実践している。

迫田 至誠 氏

日本工営(株)コンサルティング事業統括本部 流域水管理事業本部 河川水資源事業部水資源エネルギー部
ケニア国ソンドゥ・ミリウ水力発電所建設事業に、1997年から2008年にかけて、コンサルタントの所長として従事。用地補償や社会環境が問題化したが、事業者が設立した住民委員会において中立で誠意ある活動を行い、事業者と住民の間に信頼関係を築くことで、完工に大きな貢献を果たした。JICAはこの住民委員会を住民対策のモデルケースとして高く評価した。また、本事業は2009年に「JAPANプロジェクト国際賞」を受賞している。
2011~2017年、安全管理室室長として、安全管理マニュアルの作成、セミナーの開催、施工監理現場への安全パトロール等の海外工事の安全管理に従事。国建協コンサルタント部会の「安全向上のための検討会」で座長を務め、2015年にJICAへ「ODA建設工事における安全管理向上のための提案」を提出した。また、国建協・JICA共催の「安全管理能力向上研修」を推進するなど、国建協における安全管理活動に貢献した。

佐藤 定広 氏

清水建設 (株) 国際支店 ジャカルタ営業所 工事長
38年以上にわたり海外業務に携わる。アジア・アフリカにおける多数のインフラ建設事業及び石油化学系プラント土木工事の施工管理業務に従事している。
プロマネとして従事(2009~2013年)したインドネシア国メラピ火山防災砂防ダム二期工事では、施工中の2010年10月にメラピ山が大噴火を起こし、工事は一時中断を余儀なくされた。再噴火のリスクがある中で未完成のダムを含む残りの工事を再開するにあたり、従事する全関係者の安全確保を最重要課題とした施工方法を採用するなど、無事故かつ最小限の工期延伸によって工事を竣工させた。
品質第一の施工管理方針を実践、指導しながら、対象国の土木技術の向上に貢献し、人材育成と地域貢献を現地スタッフと一緒になって進める同氏のスタイルは、各国で指導した技術者に大きな影響を与えている。

前田 公博 氏

(株) オリエンタルコンサルタンツグローバル 総合開発事業部 空港部 参事
44年にわたり、多数の開発途上国でODAによる空港インフラ整備事業に参画してきた。自ら相手国政府機関の社会・経済状況を把握して、要請に応えうる事業計画を提案・形成し、各国の発展と復興に寄与してきたことは特筆すべき実績である。
インドネシア国パレンバン空港整備事業(2001~2006年)は、滑走路として利用可能な平行誘導路を建設し、工事の進捗に合わせて使用滑走路を切り替え、工事中でも空港運用を継続するという大変困難な事業であったが、関係者間の調整を主導して事業を完了させた。
モンゴル国新ウランバートル国際空港建設事業(2009年~現在)は、滑走路や旅客ターミナルビル等を整備する巨大プロジェクトであるが、同氏は設計段階から主導。併せて、空港の運用、運営及び航空管制運用等に係る複数の技術プロジェクトを実施し、本邦ODAで初めてハードとソフトの一体的な空港整備事業を実施したプロジェクトとなった。

株式会社 パスコ(法人)

代表取締役社長 島村 秀樹
半世紀にわたり海外での革新的な地理空間情報業務に携わってきた。
1974年、地理空間情報の先駆けとして米国の地理情報システム「GRIDシステム」を導入してGIS技術を日本で普及させ、ODAにおいても適用させた。2000年代より、アナログ地形図からデジタル地形図、さらにはGISによる利活用のプロジェクトの提案を途上国に対して行ってきた。
タイ、フィリピン、インドネシアに子会社をおくことで、現地でのデータ整備や地形図作成の能力を強化し、大規模なプロジェクトにも対応可能な生産体制を構築した。2010年には、「フィリピン国ミンダナオ地形図作成プロジェクト」において日本の衛星だいちを用いた1/50,000地形図を作成した。2012年の「タイ国チャオプラヤ川流域洪水対策プロジェクト」では4機の航空レーザ搭載航空機を用いて精密な地盤標高モデルを8か月間で完成させた。
近年は、都市部の課題解決やSDGsに寄与する大縮尺地形図作成、国土空間データ基盤構想整備、電子基準点整備に係る技術協力など多種多彩な地理空間情報分野に関わっている。